【芭蕉自筆影印】
尚ゝ子共達 御無事由 目出度奉存候
遊刀 貴墨 辱(カタジケナク)拝見仕 伊州へも 素牛便ニ御細翰(カン) 文章玉句感心 且盤過つるむ可しもおもひ被出候
此度又 御句あま多 感心仕候
御秀作も少ゝ相見え候
是非 存知(ゾンヂ)より可申上候へ共 何角(ナニカト)心いとま無御座取重(トリカサナリ)候間 暫時閑暇を得候時分 委細貴報可申上候
さて 洒堂一家衆 其元(ソコモト)御衆 達而(タツテ)御すゝめ候ニ付 王りなく杖を曳(ヒキ)候
おもしろ可らぬ旅寝の躰 無益之歩行 悔申計(クヤミモウスバカリ)ニ御座候
先 伊州ニ天山氣尓あ多り 當着の明る日よりさむき熱 晩ゝニおそひ 漸(ヤウヤウ)頃日(ケイジツ)常の持病計尓罷成(マカリナリ)候
爰元 追付發足可仕候
若(モシ)ハ貴境へめくり可申哉と 支考なともすゝめ候へ共 先大寒不至(イタラザル)内ニ伊勢迄参候而 其後之勝手尓可仕候
伊賀ゟ(ヨリ)大坂まて十七 八里 所ゝあゆみ候而 貴様行脚の心多めし尓と奉存候へ共 中ゝニ里とハつゝき可年 あ者れ成物ニ久つをれ候間 御同心必御無用ニ可思召(オボシメスベク)候
随分おもしろ可らぬ事と御合点可被(ナサルベク)候
達者成若法師めしつ連られ候半(ソウラハン)こ楚可為珍重(チンチョウタルベク)候半
爰元愚句 珍しき事も得不仕(ツカマツラズ)候
少ゝある中ニ
秋の夜を打崩し多る咄(ハナシ)可な
此道を行人なしに秋の暮
人聲や此道可へる共 句作申候
京江戸之状志多ゝめ候折ふしニ御座候而 早ゝ何事をも王きまへ不申候
以上
者せ越
九月廿五日
曲翠様
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尚ゝ子共達 御無事由 目出度奉存候
遊刀 貴墨 辱(カタジケナク)拝見仕 伊州へも 素牛便に御細翰(カン) 文章玉句感心 且は過つるむかしもおもひ被出候
此度又 御句あまた 感心仕候
御秀作も少ゝ相見え候
是非 存知(ゾンヂ)より可申上候へ共 何角(ナニカト)心いとま無御座取重(トリカサナリ)候間 暫時閑暇を得候時分 委細貴報可申上候
さて 洒堂一家衆 其元(ソコモト)御衆 達而(タツテ)御すゝめ候に付 わりなく杖を曳(ヒキ)候
おもしろからぬ旅寝の躰 無益之歩行 悔申計(クヤミモウスバカリ)に御座候
先 伊州にて山気にあたり 當着の明る日よりさむき熱 晩ゝにおそひ 漸(ヤウヤウ)頃日(ケイジツ)常の持病計に罷成(マカリナリ)候
爰元 追付發足可仕候
若(モシ)は貴境へめぐり可申哉と 支考などもすゝめ候へ共 先大寒不至(イタラザル)内に伊勢迄参候而 其後之勝手に可仕候
伊賀ゟ(ヨリ)大坂まで十七 八里 所ゞあゆみ候而 貴様行脚の心だめしにと奉存候へ共 中ゝニ里とはつゞきかね あはれ成物にくづをれ候間 御同心必御無用に可思召(オボシメスベク)候
随分おもしろからぬ事と御合点可被(ナサルベク)候
達者成若法師めしつれられ候半(ソウラハン)こそ 可為珍重(チンチョウタルベク)候半
爰元愚句 珍しき事も得不仕(ツカマツラズ)候
少ゝある中に
秋の夜を打崩したる咄(ハナシ)かな
此道を行人なしに秋の暮
人聲や此道かへる共 句作申候
京江戸之状したゝめ候折ふしに御座候而 早ゝ何事をもわきまへ不申候
以上
ばせを
九月廿五日
曲翠様
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