「月さびよ」句文懐紙

【芭蕉自筆影印】
 将軍明知(アケチ)可貧のむ可し 連哥會い(レンガクワイ)となミ可年て侘侍れ者 其妻ひそ可尓髪をきりて 會能料(費用)尓そなふ 明知いミし具(タイソウ)あ者れ可りて いて君 五十日能うち尓輿(コシ)耳ものせん(乗せてやる)といひて 頓て云遣むやう耳なりぬとそ
 
 月さひ与明知可妻の者なしせむ

  又玄子妻耳まいらす(進呈する)

(将軍明知(アケチ)が貧のむかし、連歌会い(レンガクワイ)となみかねて侘侍れば、其妻ひそかに髪をきりて、会の料(費用)にそなふ。明知いみじく(タイソウ)あはれがりて、いで君、五十日のうちに輿(コシ)にものせん(乗せてやる)といひて、頓て云けむやうになりぬとぞ。
 
 月さびよ明知が妻のはなしせむ

  又玄子妻にまいらす(進呈する) )