七夕の句

【芭蕉自筆影印】
 元禄六 文月七日の夜 風雲天丹満 白浪銀河乃岸をひ堂し帝 烏鵲(ウジャク)(カササギ)も橋杭を流し 一葉(舟)梶(舵・掛カケ)を吹折氣しき 二星も屋形をうしなふ偏し こよひ猶 堂ゝに過さ無も残多し登 一燈可ゝ氣そふる折節 遍昭(照)小町可哥越吟す流人有 これ耳よ川て 此二首越探て 雨星乃心をなく佐免舞とす

  小まち可う多       芭蕉
 高水尓星も旅寝や岩乃上

  遍昭(照が)うた      杉風
 堂な者多に可(貸)さ袮者う登しきぬ(絹)合羽

(元禄六、文月七日の夜、風雲天に満、白浪銀河の岸をひたして、烏鵲(ウジャク)(カササギ)も橋杭を流し、一葉(舟)梶(舵・掛カケ)を吹折けしき、二星も屋形をうしなふべし、こよひ猶、たゞに過さむも残多しと、一燈かゝげそふる折節、遍昭(照)小町が歌を吟する人有。これによつて、此二首を探て、雨星の心をなぐさめむとす。

  小まちがうた       芭蕉
 高水に星も旅寝や岩の上

  遍昭(照が)うた      杉風
 たなばたにか(貸)さねばうとしきぬ(絹)合羽)