江戸・杉風宛書簡 伊賀上野

【芭蕉自筆影印】

尚ゝ猪兵へ(衞)桃印 油断不仕様(ツカマツラザルヨウ)ニ可被仰付(オオセツケラルベク)候
去年いつ比より可終(ツイ)尓 御左右無之(コレナク) 萬(ヨロズ)無心元存候
愈(イヨイヨ) 御無事 御一家不相替(アイカワラズ)候哉 承度而已(ウケタマワリタキノミ)ニ候
自是(コレヨリ) 當春より段ゝ以書状(ショジョウヲモッテ)申進之候へ共 定而(サダメテ)是も不相届(アイトドカズ)候哉
拙者下血痛候而 遠境あゆみ可多く 伊賀ニ而 正月初より引込居申候
も者や暖氣尓成候間 上方邊へ出申(イデモウス)思(?)案 次第ニ足を定(サダメ)可申候
御状御越(オコシ)候ハゝ 京下立賣(シモダチウリ)下長者町向日平次郎殿迄 御遣(オツカワシ)し可被成(ナサルベク)候
三月下旬其方へ立寄可申候

 鶯能笠落し堂る椿哉

 木のもと尓汁も膾も桜哉

 畠打あらしの音や桜麻

 可个路ふや柴胡(サイコ)の糸能薄くも利

 種芋や花のさ可利耳賣ありく


  三月十日    桃青

 杉風様


尚ゝ猪兵へ(衞)桃印 油断不仕様(ツカマツラザルヨウ)に可被仰付(オオセツケラルベク)候
去年いつ比よりか終(ツイ)に 御左右無之(コレナク) 萬(ヨロズ)無心元存候
愈(イヨイヨ) 御無事 御一家不相替(アイカワラズ)候哉 承度而已(ウケタマワリタキノミ)に候
自是(コレヨリ) 当春より段ゝ以書状(ショジョウヲモッテ)申進之候へ共 定而(サダメテ)是も不相届(アイトドカズ)候哉
拙者下血痛候而 遠境あゆみがたく 伊賀に而 正月初より引込居申候
もはや暖気に成候間 上方辺へ出申(イデモウス)思(?)案 次第に足を定(サダメ)可申候
御状御越(オコシ)候はゞ 京下立売(シモダチウリ)下長者町向井平次郎殿迄 御遣(オツカワシ)し可被成(ナサルベク)候
三月下旬其方へ立寄可申候

 鶯の笠落したる椿哉

 木のもとに汁も膾も桜哉

 畠打あらしの音や桜麻

 かげろふや柴胡(サイコ)の糸の薄ぐもり

 種芋や花のさかりに売ありく


  三月十日    桃青

 杉風様


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