【芭蕉自筆影印】
度ゝ御細翰 御老筆御いとひも不被成(ナサレズ) 別而辱(ベツシテカタジケナク)御懐(オナツカシク)致拝見候
子共達 御堅固 朝暮風情 老養之御志不浅 感心仕(ツカマツル)事ニ御座候
残生 夏中甚署ニ痛候而 頃日(ケイジツ)まて絶諸縁 初秋ゟ閉関 病閑保養尓かゝつらひ 筆をもとらす候故 心外打過申候
一 如行交会之哥仙 感吟 若手之御衆ハ其筈ニ御座候處 如行貴翁御作上達之躰相見え珍重 於拙者悦不大形(ヨロコビオオカタナラズ)候
御發句折ゝ御書付御越可被成候
少ゝ存知寄も御座候間 兼(カネテ) 而御工夫被成候而 御見せ可被成候
其元風雅とりゝゝのよし 是又一風流
相手なき碁八う多れ不申ニ 幸如行可精力の便御座候間 あらそひなくて負る事な可れと 御しめし可被成候
此筋 千川 左柳子ゟ預進墨(シンボクニアズカリ)候へ共 いま多何角と取紛 夏秋之をこ多り共重漬 暇も無御座候間 自是無音仕候共 若役尓随分御状つゝ氣られ 風雅御見せ可被成候
折ふし甚五兵へ殿 儀大夫? 御見舞 一宿仕候?手 如此(カクノゴトクニ) 御座候
如行も普請被候由珍重事ニ存候
文鳥子元服之よし 目出度存候
愈(イヨイヨ)成長多る邊く候
千川子瘧(オコリ)久ゝ御? いま本とハ御快然 珍重??
頃日愚句
金屏能松の古さ与冬籠り
鞍つ本尓小坊主乗るや大根ひき
寒菊や醴(アマザケ)造る窓の前
素堂菊宴
菊の香や庭尓切多れ沓の底
嵐蘭病死之事ハ 庄兵へ殿へ申参候由 御聞及可被成候
此筋子も御懇意候間 笑止?可思召候
拙者力落御推量可被成候
風雅一方被打破候
猶追而申上候
愚句他郷へ不出(イデザル)様ニ 御覚悟被成可被下候
むさと集入候ニ迷惑仕候
彦根許六繪 色帋 いま多 不参候よし 御せハ被成 早ゝ被遣可被下候
如行一所奉頼候
以上
者せ越
霜月八日
荊口雅老
(
度ゝ御細翰 御老筆御いとひも不被成(ナサレズ) 別而辱(ベツシテカタジケナク)御懐(オナツカシク)致拝見候
子共達 御堅固 朝暮風情 老養之御志不浅 感心仕(ツカマツル)事に御座候
残生 夏中甚署に痛候而 頃日(ケイジツ)まで絶諸縁 初秋ゟ閉関 病閑保養にかゝづらひ 筆をもとらず候故 心外打過申候
一 如行交会之歌仙 感吟 若手之御衆ハ其筈に御座候処 如行貴翁御作上達之躰相見え珍重 於拙者悦不大形(ヨロコビオオカタナラズ)候
御発句折ゝ御書付御越可被成候
少ゝ存知寄も御座候間 兼(カネテ) 而御工夫被成候而 御見せ可被成候
其元風雅とりゞゝのよし 是又一風流
相手なき碁はうたれ不申に 幸如行が精力の便御座候間 あらそひなくて負る事なかれと 御志めし可被成候
此筋 千川 左柳子ゟ預進墨(シンボクニアズカリ)候へ共 いまた何角と取紛 夏秋之おこたり共重積 暇も無御座候間 自是無音仕候共 若役に随分御状つゞけられ 風雅御見せ可被成候
折ふし甚五兵へ殿 儀大夫? 御見舞 一宿仕候?手 如此(カクノゴトクニ) 御座候
如行も普請被候由珍重事に存候
文鳥子元服之よし 目出度存候
愈(イヨイヨ)成長たるべく候
千川子瘧(オコリ)久ゝ御? いまほどは御快然 珍重??
頃日愚句
金屏の松の古さよ冬籠り
鞍つぼに小坊主乗るや大根ひき
寒菊や醴(アマザケ)造る窓の前
素堂菊宴
菊の香や庭に切たれ沓の底
嵐蘭病死之事は 庄兵へ殿へ申参候由 御聞及可被成候
此筋子も御懇意候間 笑止?可思召候
拙者力落御推量可被成候
風雅一方被打破候
猶追而申上候
愚句他郷へ不出(イデザル)様に 御覚悟被成可被下候
むさと集入候に迷惑仕候
彦根許六繪 色帋 いまだ 不参候よし 御せは被成 早ゝ被遣可被下候
如行一所奉頼候
以上
ばせを
霜月八日
荊口雅老
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