【芭蕉自筆影印】
尚ゝ江戸へも書状遣し度候
重而(カサネテ)御無心 可申進之(モウシシンズベク)候
名月此方ニて山家を楽候
其元御風流 御座可被成候
三文字屋(飛脚屋)便御芳翰(カン フミ) 并(ナラビニ)江戸 大津之状共御届 是又 辱(カタジケナク)令存(ゾンジシメ)候
愈(イヨイヨ)御無事之旨 珍重不浅存候
御一家別条不相聞 目出度令存候
拙者先 無為(ブイ)ニ罷(マカリ)有候
頃日(ケイジツ)者少ゝ冷氣 素牛 丈草 相替(アイカワル)事無 御座候や
爰元(ココモト)度ゝ會(クワイ)御座候へ共 いま多可るみニ移り兼 志ふゝゝの俳諧 散々の句の三出候而 致迷惑候
此中脇 二つ致候間 懸御目(オメニカケ)候
折ゝや雨戸尓さハる萩の声聲
放寸所尓おらぬ松虫
荒ゝて末ハ海行野分哉
靍の頭をあくる粟の穂
靏ハ常躰(ツネテイ)之氣しきに落可申哉
一 大坂ゟ終(ツイ)ニ一左右(イッサウ)無之 扠ゝ(サテサテ) 不届者共 さな可ら打捨候もおとなし可らす存候而 頃日自是(コレヨリ) 洒堂ま亭案内致候ハ 車要(車庸)方ゟ早ゝ待申なとゝ申来(モウシキタリ)候
一圓難心得候間 名月過先参宮と心懸(ココロガケ) 九月の御神事お可み可申と存候
素牛なと いせの出合所望ニ候はゝ ひそ可に其旨心得られ候様ニ 御傳可被成候
爰元国司帰城 とこやら事やか満しく候間 追付(オッツケ) 他境へ移り可申候
一 高橋絛助殿御上り御語之(カタリノ)由 なつ可しく存候
曲内子無事と存候
年内いま一度参會可多く契置(チギリオキ)候
是等の人ゝ春くれ多る器ニ天候
猶重而可申候間 先如此(カクノゴトクニ)御座候
以上
者せ越
八月九日
去来雅丈
(
尚ゝ江戸へも書状遣し度候
重而(カサネテ)御無心 可申進之(モウシシンズベク)候
名月此方にて山家を楽候
其元御風流 御座可被成候
三文字屋(飛脚屋)便御芳翰(カン フミ) 并(ナラビニ)江戸 大津之状共御届 是又 辱(カタジケナク)令存(ゾンジシメ)候
愈(イヨイヨ)御無事之旨 珍重不浅存候
御一家別条不相聞 目出度令存候
拙者先 無為(ブイ)に罷(マカリ)有候
頃日(ケイジツ)は少ゝ冷氣 素牛 丈草 相替(アイカワル)事無 御座候や
爰元(ココモト)度ゝ會(クワイ)御座候へ共 いまだかるみに移り兼 しぶゝゝの俳諧 散々の句のみ出候而 致迷惑候
此中脇 二つ致候間 懸御目(オメニカケ)候
折ゝや雨戸にさはる萩の声 (雪芝)
放す所におらぬ松虫
荒ゝて末は海行野分哉 (猿雖)
鶴の頭をあぐる粟の穂
鶴は常躰(ツネテイ)之けしきに落可申哉
一 大坂より終(ツイ)に一左右(イッサウ)無之 扠ゝ(サテサテ) 不届者共 さながら打捨候もおとなしからず存候而 頃日自是(コレヨリ)
洒堂まで案内致候ば 車要(車庸)方より早ゝ待申などゝ申来(モウシキタリ)候
(洒堂への手紙に車庸より返事)
(洒堂・之道の師匠招請先陣争)
(車庸により大坂行きを優先)
一圓難心得候間 名月過先参宮と心懸(ココロガケ) 九月の御神事おがみ可申と存候
素牛など いせの出合所望に候はゞ ひそかに其旨心得られ候様に 御伝可被成候
爰元国司(伊賀上野藩主藤堂)帰城 どこやら事やかましく候間 追付(オッツケ) 他境へ移り可申候
一 高橋絛助殿御上り御語之(カタリノ)由 なつかしく存候
曲内子無事と存候
年内いま一度参會かたく契置(チギリオキ)候
是等の人ゝすぐれたる器にて候
猶重而可申候間 先如此(カクノゴトクニ)御座候
以上
ばせを
八月九日
去来雅丈
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