【芭蕉自筆影印】
尚ゝ四五中ニ又ゝ 委(クワシク)可申進之候
先大坂へ出(イデ)候を御志らせの為 夏ゟ七月迄之御状 早ゝ申残し候
尤(モットモ) 遅速御座候へ共 段ゝ無相違相達し候
久ゝ伊賀ニ逗留故 便りも不致候
無心元(ココロモトナク)元被存候
愈(イヨイヨ) 御無事ニ御勤 御家内相替事無御座(ゴザナク)候哉 承度存候
お三女祝言 当月中ニ而可有御座(ゴザアルベキ)と推量申候
定而(サダメテ)御取込可被成候
定而首尾能(ヨク)相調可申と御左右(ゴサウ)侍入候
一 拙者 先ハ無事ニ長の夏を暮し 漸ゝ秋立(タチ)候而 頃日(ケイジツ)夜寒(ヨサム)の比ニ移候
い可にも秋冬間 無恙(ツツガナク)暮し可申様ニ覚候間 少も御気遣被成ましく候
追付参宮心可け候故 先大坂へむけて出申候
去ル八日ニ伊賀を出候而 重陽の日 南都を立 則其暮 大坂へ至候而 酒堂方ニ旅宿 假(カリ)ニ足をとゝめ候
名月ハ伊賀ニ而見申候
發句ハ重而(カサネテ)可懸御目(オメニカクベク)候
菊の香やならにハ古き仏達
菊の香やならハ幾代の男ぶり
ぴいと啼尻聲悲し夜ルの鹿
いまた句躰(クテイ)難定(サダメガタク)候
他見被成ましく候
追付 爰元逗留之く共可懸御目候
早ゝ御状御こし可被成候
其元両替丁可 する可町酒店ニ天稲寺や十兵へと申もの 爰元伊丹屋長兵へ店ニ天候間 早ゝ御左右(ゴサウ)承度候
子珊(シサン) 秋の集 被催候や
左候ハゝ 爰元の俳諧一巻下(クダ)し可申候
上方筋 別座敷 炭俵ニ天色めき和多り候
両集共 手柄を見せ候
少ハ桃隣耳毛 師恩貴きすへをわきまへ候へと 御申成(オモウシナシ)候へく候
桃隣 俳諧 俄(ニワカ)ニ替上(カワリアガ)り候と 専(モッパラ)沙汰ニ天候
急便
早ゝ
者せ越
九月十日
杉風様
(
尚ゝ四五中に又ゝ 委(クワシク)可申進之候
先大坂へ出(イデ)候を御しらせの為 夏より七月迄之御状 早ゝ申残し候
尤(モットモ) 遅速御座候へ共 段ゝ無相違相達し候
久ゝ伊賀に逗留故 便りも不致候
無心元(ココロモトナク)元被存候
愈(イヨイヨ) 御無事に御勤 御家内相替事無御座(ゴザナク)候哉 承度存候
お三女祝言 当月中に而可有御座(ゴザアルベキ)と推量申候
定而(サダメテ)御取込可被成候
定而首尾能(ヨク)相調可申と御左右(ゴサウ)侍入候
一 拙者 先は無事に長の夏を暮し 漸ゝ秋立(タチ)候而 頃日(ケイジツ)夜寒(ヨサム)の比に移候
いかにも秋冬間 無恙(ツツガナク)暮し可申様に覚候間 少も御気遣被成まじく候
追付参宮心がけ候故 先大坂へむけて出申候
去る八日に伊賀を出候而 重陽の日 南都を立 則其暮 大坂へ至候而 酒堂方に旅宿 假(カリ)に足をとゞめ候
名月は伊賀に而見申候
発句は重而(カサネテ)可懸御目(オメニカクベク)候
菊の香やならには古き仏達
菊の香やならは幾代の男ぶり
ぴいと啼尻声悲し夜るの鹿
いまだ句躰(クテイ)難定(サダメガタク)候
他見被成まじく候
追付 爰元逗留之く共可懸御目候
早ゝ御状御こし可被成候
其元両替丁か するが町酒店にて稲寺や十兵へと申もの 爰元伊丹屋長兵へ店にて候間 早ゝ御左右(ゴサウ)承度候
子珊(シサン) 秋の集 被催候や
左候はゞ 爰元の俳諧一巻下(クダ)し可申候
上方筋 別座敷 炭俵にて色めきわたり候
両集共 手柄を見せ候
少は桃隣にも 師恩貴きすべをわきまへ候へと 御申成(オモウシナシ)候べく候
桃隣 俳諧 俄(ニワカ)に替上(カワリアガ)り候と 専(モッパラ)沙汰にて候
急便
早ゝ
ばせを
九月十日
杉風様
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