岐阜・落悟宛書簡

【芭蕉自筆影印】


尚ゝ 秋芳軒主預御状(ゴジョウニアズカリ) 忝(カタジケナク)存候
御同境又三郎殿 御下之砌(ミギリ) 預芳翰(ホウカンアズカリ) 殊 小帋一束被懸賢慮(ケンリョニカケラレ) 忝 奉存(ゾンジタテマツリ)候
愈(イヨイヨ) 其元(ソコモト)俳諧も 成隆之由(ヨシ) 御手柄 感心不斜(ナナメナラズ)候
野生とし明候へハ(?) 又ゝ多ひこゝち そゝろ尓な梨て 松嶋一見乃 おもひや末寸 此廿六日江上を立出候
みちのく 三越路之風流?(?)人も あ禮かし登のみ二候
者る介き 多ひ寝の空をおもふ尓も 心尓障んもの い可ゝ登 先衣更着末 草庵を人尓ゆつる
此人なん妻をくし むす免をも多利介禮ハ 草庵の可ハ連るやうお可しくて

 草の戸も住か者る世や雛の家

    三月廿三日 者世越
  落梧雅丈

御連中 可然頼存候


取込候故一紙申残候

尚ゝ 秋芳軒主預御状(ゴジョウニアズカリ) 忝(カタジケナク)存候
御同境又三郎殿 御下之砌(ミギリ) 預芳翰(ホウカンアズカリ) 殊 小紙一束被懸賢慮(ケンリョニカケラレ) 忝 奉存(ゾンジタテマツリ)候
愈(イヨイヨ) 其元(ソコモト)俳諧も 成隆之由(ヨシ) 御手柄 感心不斜(ナナメナラズ)候
野生とし明候へば(?) 又ゝたびごゝち そゞろになりて 松嶋一見の おもひやまず  此廿六日江上を立出候
みちのく 三越路之風流佳(?)人も あれかしとのみに候
はるけき たび寝の空をおもふにも 心に障んもの いかゞと 先衣更着末 草庵を人にゆづる
此人なん妻をぐし むすめをもたりければ 草庵のかはれるやうおかしくて

 草の戸も住かはる世や雛の家

    三月廿三日 ばせを
  落梧雅丈

御連中 可然頼存候
取込候故一紙申残候