伊勢山田 益光宛書簡 芭蕉庵

【芭蕉自筆影印】

〈 尚ゝ先日弥三殿御尋候へ共 急ゝの仕合 御咄(オハナシ)のミ承 書状も進之不申候
追而(オッテ)具(ツブサ)二可得御意(ギョイヲウベク)候 〉

被寄思召(オボシメシヨセラレ)貴翰(キカン) 忝(カタジケナク) 致拝見候

〈 少書度事共も御座候へ共 〉

愈(イヨイヨ) 御無異之由 珍重不過之(コレニスギズ)候

〈 使まちゐ被申(モウサレ)候間 王すれ多るまゝニ 〉

一別已後(イゴ)爰(ココ)かしこ近付も

〈 志多ゝめ申候 〉

多キ付(オオキニツキ) 御帰も奈ま奈可奈り登 何方(イズカタ)も無音仕(ブインツカマツリ) 其元(ソコモト)御厚志共背本意(ホンイニソムキ)存候
且木綿足袋被懸堅慮(ケンリョニカケラレ) 遠方不残(アサカラヌ)御心指(ココロザシ) 御礼難盡(ツクシガタク)奉存候

一 前句付もす可りニ成候よし 尤(モットモ) 道の多より尓なるへき事ニも奈らす候
一應の尓きあひのみニ而御座候へ 者やくやみ候も珍重ニ存事ニ候
其説(?)透逸両句感吟
中尓も雪守 やすくてす奈を奈るす可た 珍ゝ重ゝ不斜(ナナメナラズ)候
愚句 何事も無御座 人出合もむつ可し登 近邊子共のやう奈る俳諧 折ゝい者せて 奈くさみ申候

  冬の句

 冬籠り又よりそ者ん此者しら  愚句

 襟巻尓首引入て冬の月     杉風

 火桶抱ておと可い臍をかくし个り
              桑門路通

 落葉焼色ゝの木の煙可奈  同 宗波

先如此(カクノゴトシ)
跡より委細可得御意(ギョイヲウベク)候
平庵老(?)より先日比 預貴札(キサツニアヅカリ) いまだ不能貴報(キホウニアタハズ)候
勝延丈 又玄子 一有子 可然奉頼候
両年之内 参宮又ゝとこそね可ひ申つれ

  極月三日      芭蕉庵

 益光雅丈


〈 尚ゝ先日弥三殿御尋候へ共 急ゝの仕合 御咄(オハナシ)のみ承 書状も進之不申候
追而(オッテ)具(ツブサ)に可得御意候 〉

被寄思召(オボシメシヨセラレ)貴翰(キカン) 忝(カタジケナク) 致拝見候

〈 少書度事共も御座候へ共 〉

愈(イヨイヨ) 御無異之由 珍重不過之(コレニスギズ)候

〈 使まちゐ被申(モウサレ)候間 わすれたるまゝに 〉

一別已後(イゴ)爰(ココ)かしこ近付も

〈 したゝめ申候 〉

多キ付(オオキニツキ) 御帰もなまなかなりと 何方(イズカタ)も無音仕(ブインツカマツリ) 其元(ソコモト)御厚志共背本意(ホンイニソムキ)存候
且木綿足袋被懸賢慮(ケンリョニカケラレ) 遠方不浅(アサカラヌ)御心指(ココロザシ) 御礼難尽(ツクシガタク)奉存候

一、前句付もすがりに成候よし 尤(モットモ) 道のたよりになるべき事にもならず候
一応のにぎあひのみに而御座候へば はやくやみ候も珍重に存事に候
其説(?)秀逸両句感吟
中にも雪守 やすくてすなをなるすがた 珍ゝ重ゝ不斜(ナナメナラズ)候
愚句 何事も無御座 人出合もむつかしと 近辺子供のやうなる俳諧 折ゝいはせて なぐさみ申候

  冬の句

 冬籠り又よりそはん此はしら  愚句

 襟巻に首引入て冬の月     杉風

 火桶抱ておとがい臍をかくしけり
              桑門路通

 落葉焼色ゝの木の煙かな 同 宗波

先如此(カクノゴトシ)
跡より委細可得御意(ギョイヲウベク)候
平庵老(?)より先日比 預貴札(キサツニアヅカリ) いま多不能貴報(キホウニアタハズ)候
勝延丈 又玄子 一有子 可然奉頼候
両年之内 参宮又ゝとこそねがひ申つれ

  極月三日      芭蕉庵

 益光雅丈















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